人気切手「月に雁」の価値はどこまで下がった?
1949年に発行された切手「月に雁」は、前年1948年発行の「見返り美人」と並び高額な記念切手の象徴ともいえる存在となっています。
知名度では見返り美人に一歩及ばないものの取引価格は常に見返り美人の上を行っている月に雁。1枚数万円するイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかしそんな月に雁も切手ブームの終焉やコレクター人口の減少によりその価値は大きく下落しているのが実情。ピーク時に比べ現在の価値はかなり低くなっていると言わざるを得ません。
実際にどのくらい価値が下がっているのか?実売価格や日本切手カタログの評価額との乖離など、月に雁の現在の価値と向き合ってみたいと思います。
日本切手カタログによる月に雁の価値
まずは私たちが切手の価値を知る上で参考にすることが多い切手カタログの価値を見てみます。使用する書籍は最も人気がある日本郵趣協会のさくら日本切手カタログの2020年版。
さくら日本切手カタログによると、月に雁の発行枚数は200万枚。額面は8円。未使用普通品の評価額は13,000円なのに対し美品は25,000円、そして使用済み切手の場合は9,500円となっています。
この評価額から換算するに、5枚1組のシートの場合10万円は下らないことが分かります。未使用美品18,000円の見返り美人の5枚1組のシートの評価額が9万円くらいであることを考えると、月に雁のシートは12万~15万円といったところか。
こう見るとかなりの価値がある切手ということが分かりますね。
実は月に雁のこの評価額というのは50年以上も前からほとんど変わっていません。しかし1960~1970年代の物価は今の数分の1。つまり実質的には10分の1~5分の1以下になっているのです。
1枚2万円前後の評価額が付けられる月に雁も昔に比べ大きく価値を下げているというのですから、かつての人気の高さが伺えます。
なにはともあれ、2020年版さくら日本切手カタログの未使用普通品13,000円、未使用美品25,000円、使用済み9,500円というのを基準に話を進めます。
切手販売業者が販売する月に雁の価格
次に切手を販売する業者が今現在月に雁をどのくらいの価格で売っているのかを見てみましょう。最も現実に即した小売価格ということになるでしょう。
状態 | 販売価格 | |
---|---|---|
A社 単片 | 普通品 | 4,000円 |
B社 単片 | 普通品 | 4,500円 |
C社 単片 | 普通品 | 5,480円 |
D社 単片 | 美品 | 5,000円 |
E社 単片 | 美品 | 7,300円 |
A社 単片 | 美品 | 9,800円 |
A社 シート | 普通品 | 28,000円 |
B社 シート | 普通品 | 30,000円 |
A社 シート | 美品 | 65,000円 |
「普通品」「美品」というのは業者の主観に委ねられるため実に曖昧。少しでも高く売りたいがためにより良く表示している可能性も十分考えられますしね。この評価はあくまでも参考程度に。
それをもとに切手「月に雁」の業者の販売価格を調べてみた結果、単片は程度が良くないもので3,000円、普通品で5,000円前後、美品と謳われるものでも10,000円には届かないことが見て取れました。
5枚1組のシートにしても30,000円程度が相場。どんなに美品でも50,000~60,000円が関の山といったところでしょうか。
さくら日本切手カタログの単片普通品13,000円、美品25,000円という評価額から見ると非常に安価と言わざるを得ません。業者による実売価格はおおよそ3分の1程度と見ていいでしょう。
これは私たちが業者に買取してもらう際さらに安くなることを意味しています。
良心的な買取業者でも販売額の50~70%くらいでしょうか。そうなると普通品で2,000~3,000円、美品でも3,000~5,000円くらいでしょうか。程度が悪いものだと数百円なんてケースも。
かつての人気切手である月に雁も世の中の流れには勝てませんね…
月に雁の個人売買はさらに安い
日本切手カタログの評価額の3分の1程度が実売価格となっている月に雁の切手。しかしこれでも業者のコストや利益を上乗せしての価格。個人売買ではもはや叩き売り状態となっています。
月に雁が活発に取引されているメルカリやヤフオクの価格を見てみると…
状態 | 販売価格 | |
---|---|---|
単片 | シミ・汚れ | 390円 |
単片 | シミ・汚れ | 800円 |
単片 | 使用済み | 980円 |
単片 | 普通品 | 1,148円 |
単片 | 普通品 | 1,380円 |
単片 | 普通品 | 1,500円 |
単片 | 普通品 | 1,385円 |
単片 | 普通品 | 2,000円 |
単片 | 美品 | 2,000円 |
単片 | 美品 | 3,000円 |
シート | シミ・汚れ | 6,230円 |
シート | シミ・汚れ | 7,600円 |
シート | シミ・汚れ | 8,000円 |
シート | 普通品 | 8,000円 |
シート | 普通品 | 10,000円 |
シート | 美品 | 14,500円 |
シート | 美品 | 20,760円 |
個人売買での月に雁の取引価格は単片だと1,000~2,000円が相場。かなりの美品クラスでも2,000~3,000円が限界のようです。シミが汚れが目立つような程度の悪いものの場合500~1,000円ほど。
日本切手カタログの評価額では10万円は下らないであろうシートも、シミや汚れが目立つものは6,000~8,000円、普通品で10,000円前後、美品レベルのものでも15,000~20,000円といったところ。
前述したように切手業者による月に雁の販売価格は日本切手カタログの評価額の約3分の1ほど。個人売買ではさらにその3分の1というのが実情です。
つまり月に雁の個人売買の取引価格はさくら日本切手カタログの評価額の10分の1…日本における現在の切手の価値というのはこの程度のものなのです。
月に雁の価値は下落の一途
現在は販売業者で5,000円前後、個人売買にいたっては1,500円前後で取引されている月に雁。しかし10年ほど前の状況を調べてみると今よりは高い価格で売買されていたことが分かります。
販売業者の場合美品で10,000円前後、ヤフオクなどの個人売買では美品が3,000円、普通品が2,000円ほどで取引されていました。
現在に比べ劇的に高かったわけではありませんが、それでも月に雁の価値は徐々に、しかし確実に下がってきています。
考えられる理由としては切手コレクターの減少や高齢化によって切手を処分する動きが広がっていること。かつてのプレミアム切手である月に雁も現在は“だぶついている”と言わざるを得ないのです。
また、メルカリの登場によって個人売買がより気軽に行えるようになったのも価格下落に拍車をかけていると思われます。
かつて熱心に切手を集めていた世代の高齢化は今後さらに進み、月に雁の在庫はさらに増えることが予想されます。切手コレクターが減り続けている現状では、今後さらに価値が下がっていくと見るべき。
これから切手を集めるというのであれば安く買える良い時代になったと感じることができるでしょうが、手放すことを考えている大多数の人間にとってはババ抜きの様相を呈していると言っていいのではないでしょうか。
月に雁を売りたい場合は個人売買?業者?
これらを踏まえ、私たち個人が月に雁を売却したい場合、業者に買い取ってもらった方がいいのか、それともメルカリなどを用い個人売買で売ってしまった方がいいのか?
メルカリを例に取ってみましょう。美品の月に雁が2,000円で売れたとします。しかしそこから販売手数料10%が引かれ、さらにメルカリの場合は送料も出品者負担である場合がほとんど。
普通郵便で送るにしても封筒代と切手代で100円ほどかかります。つまり手元に残るのは1,700円ということに。そもそもメルカリにおいて2,000円で売れる月に雁というのはかなりの美品。それでもこの程度なのです。
一方買取業者に売る場合、美品であれば少なくとも3,000円以上が期待できます。それだけ販売価格が高いですからね。買取に際し手数料などが一切かからない点も嬉しいところです。
普通品に関しても個人売買なら実質1,000円程度の利益にしかなりませんが、買取業者に売る場合はもう少し高く買い取ってもらえるでしょう。2,000円前後が目安となるでしょうか。
一方、買取業者も顔をしかめるような程度の悪い月に雁の場合は個人売買の方が良いかもしれません。“信用”が何より重要な切手販売業者では低品質な商品を扱いたがらないからです。
個人売買、買取業者どちらを選択するにせよ、まずは切手買取業者による査定を受けたほうがいいでしょう。なぜなら買取業者の査定の場合、提示された額が気に入らなければ断ることができるから。もちろん査定費用はかかりません。
まずは買取業者に査定してもらい、その額を確認したうえで個人売買にするか、買取にするかを決めればいいのではないでしょうか。
月に雁を少しでも高く売るために
一口に切手を売るといっても買取を行う業者は数多く、実績や買取額は千差万別。そんな中確かな実績を背景に全国展開を行い多くの支持を得ているのが「バイセル」です。
出張査定はもちろん宅配での買取も行っており、わざわざ店舗に出向く必要がないのは嬉しいところ。万が一査定額に満足できない場合のキャンセルはもちろん無料です。
かつては切手を集める趣味はポピュラーでしたが、現在切手収集家の数は減少の一途をたどり切手の価値は日に日に下がってきています。いらない切手が家にあるのであれば、少しでも早く換金したほうが得策です。
汚れていたり使いかけであったりしても買取の対象になる場合もあるため、とにかく一度プロの査定してもらうことが重要になります。
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